初心者向け英語文献講読のコツ
2006-01-13
2006-02-18, 2006-02-22 小修正
2006-08-07 英英辞典について追記
2006-09-12 BGMについて追記
2007-06-15 小説について追記
2009-05-16 文献への書き込みについて追記
2023-12-08 英和辞書について追記
2024-04-24 英和辞書について追記
科学技術の世界では日本人が行う研究で本当に独創的といえるものはあまりなく、
最先端の情報を仕入れるためにはどうしても欧米人が書いた英語文献を参照する
必要があります。(逆に言えば、日本語訳が日本で出版されると言うことは、その
情報はもはや最先端or最新ではない)
今の日本、英語ができないとかなり情報収集範囲が狭まることになってしまうので
不得意だからと言って逃げ回ってばかりいられません。
私は学生と一緒に英語文献輪講&日本語でのプレゼンをゼミの中で行っていますが、
学生の英語苦手意識には驚きます。おそらく中学高校と英語が苦手だったのでしょう。
断言してもいいのですが、学生がある科目を苦手になる原因はたった一つ
「嫌がって勉強しなかったからできない」
です。2000人弱の学生、生徒を教えてきましたが、勉強ができない学生はできる学生の
10分の1も勉強していないことが殆どです。頭が悪くて成績が悪かった学生は極めて
少数で、殆どの学生はやれば必ず伸びます。
また、「頭が悪いからおれは英語はダメだ」というのは「運動神経鈍いからゲーム
できない」と言い訳するのと同じくらい見当はずれです。ゲームに運動神経は一切関係
ないのは皆さんご存知のとおり。
さらに。もし大学院進学を考えている人にとっては院試科目として専門科目以外に必ず
英語があります。内容は専門分野に関係した英語文献から引用して試験問題が作成され
ます。科学技術文献で使用されている文法はたかだか高校初級程度です。慣れと、
あとはちょっと専門用語を勉強すれば終わり。
嫌がってばかりではなく思い切ってやってみよう!
断っておきますが、私自身は決して英語が得意なわけではありません。高校時代、
英語で落第の危機に瀕したこともあります。到底学生に英語文献の読み方を語る資格
はないのですが、あえてここで、私自身の経験や過去の教育経験に基づいた森口流
「初心者向け英語文献講読のコツ」をまとめておきます。
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・翻訳サイトやスキャン読み取りソフトは使わないこと。辞書を引く!
普通の英和辞典で構わない。英語の得意な人はよく「英英辞典を使うべきだ」と
ふざけたことを言うが無視してよい。初心者が英英辞典を使うと悲劇が起きる。(追記1)
・中学生用英和辞書は役に立たない。高校生以上用の英和辞書を使え。
新品で買う必要はない。古本でも十分。
いい高校用英和辞書は「フェイバリット英和辞典」「Wisdom」「Anchor」
「シニア英和辞典」などがよい。
「ジーニアス(Genius)」は発音が変だし、「クラウン英和辞書」は読みにくいし
単語の用法や熟語が不足しているので避けた方がよい。
・辞書を引いてページの端に単語の意味を書き込むのはよいが頭の中で日本語で理解
しないようにせよ。
apple -> appleってりんごだったな。 あ、りんごかー。じゃダメ
・辞書を引いたら、意味だけじゃなく発音も見て頭の中で3回発音すること!
発音記号を読めるようになっておけ!
・単語の意味を辞書で引いた場合、それを他の紙に書き出したりするのは無駄。
その文献に直接書き込むのがよい。
例:英語が苦手なある組員が英語文献プレゼンをやったときの文献への書き込み
例1、例2
最初はこのように書き込みだらけになってしまうが、20〜30ページ程度進むと書き込みの
量は劇的に少なくなる。
・訳をノートに書いたりせずに極力英文のまま理解する。
・読むときは頭の中で「音読」する。
・1回読むのではなく、少なくとも2回読むこと。
1回目:辞書なしで1-2ページ集中して一気に読む。わからない単語のうち、重要
そうな単語にはアンダーラインを引いておく。
重要そうでわからない単語の意味を辞書で引く。辞書を引いたあと、テキスト
の空白部にその単語の意味を書き込んでもよい。書き込む場所はその英単語の
場所から離して書いておく。
他の紙に知らない単語とその意味一覧のようにまとめて書き出すのは無駄。
2回目:再度、集中して一気に読む。
この2回の読み込みは間をあけずに同一日に一気にやること。「1回目読んだ後、
2回目に読むのは来週にしよう」では努力が無駄になる。
もし時間がないのなら、1章を通しでやるのではなく、細かく数セクション
ごとにわけ、それぞれを一気に2回の読みを行うこと。
理想的なことを言えば、上記2回の読み込み後、数日あけて再度読むと効果大。
・最初はきついが、20-30ページ気合を入れて読んでいるとかなり楽に読める
ようになる。(単なる慣れとも言う)
・少しずつでもいいから毎日やること。
と言ったら、毎日1文ずつ読む者(元同僚)がいてびっくりした。
慣れるまでは少なくとも毎日3-4ページ以上は読むべし。
・担当部分の要約を日本語でプレゼンする場合は、訳を全部読み上げるようなことを
してはならない。
A4用紙1-2枚の配布レジュメ(あるいはパワポ)以外には何も見ずに自分の言葉で
プレゼンすること。(森口組では卒論でも原稿の読み上げは許さない)
発表で原稿が必要だと言うことは理解できてない証拠であるから頭の中をよく整理
すること。
その後に、脳内プレゼンシミュレーションを数回。実際に声に出してのプレゼン
練習を数回やるのがよい。1回目は下手すぎて自殺したくなるが、3-4回目には
かなりましになる。
・自分が担当してない部分も少なくとも1回(できれば3回)は必ず読め。
・もし自分で「辞書を引いても読めないのは自分が高校初級程度の英文法さえ身に
ついてないからだ」と気がついたのなら、高校の英文法参考書を勉強しなおすべき。
もし高校卒業と同時に捨ててしまったのなら以下の高校初級程度英文法参考書を
買うとよい。
「総合英語 Forest」 桐原書店 1400円程度 (こっちの方が簡単)
「コンプリート 高校総合英語」桐原書店 1400円程度
毎日数ページずつ読む、のではなく! 集中して一気に数日で読むこと。途中で前に
書かれていたことを忘れても構わないから、とにかく一気に読み下す。
毎日10分、数ページずつ読む、ということをやると絶対最後のページまで行き着
かない! 毎日10分ずつロールプレイングゲームをやる奴(私の後輩に実際そう
いうことをやる奴がいた!)はアホだと思うでしょ?
一気にやり終えてこそ漢!
・最近の学生を見ていると、音楽を聴きながら本を読んだりレポートを書いたりして
いる者が多い。
英語文献を読んでいる最中に歌を聴くと集中できないのでやめたほうがよい。
特に日本語の歌を聴きながら英語文献を読むと効率が極度に低下する。
過去に、ネットフリックスでドラマを見ながら勉強するアホ組員がいた。
その組員は何度注意してもやめなかった。その結果、留年し、その後退学した。
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上記を毎日実行していると、その分野の文献は数ヵ月後にはある程度スラスラ読める
ようになります。というのは、自分が勉強している分野だから専門用語をよく知って
いるし、科学技術文献の文法は簡単だからです。
しかし勘違いしてはいけません。決してハーレクインロマンスを英語でスラスラ読める
ようになったわけではないのです。辞書引きマシーンと化すこと必至。(経験者は語る。笑)
概して文系書物の文章は日本人にとってなじみのない英単語が多用され、文の構造も
複雑です。
なーんであんなに複雑なのかねー? 有名な文学作品なんて1文が10行以上にわたる
ことも多い。んなの全然意味わかんねーよっ!!
追記1:英英辞典に関して追記
英語初心者は英英辞典を使わないほうがいい。しかしある程度英語に慣れてきたら
英英辞典を使うのは英語力向上に役立つ(らしい)。
その際の注意点を以下にまとめておく。
英英辞典のまとめ。
・英語学習者用の辞典を買うこと! 決してネイティブ用のを買ってはならない。
・オックスフォード現代英英辞典(Oxford Advanced Learner's Dictionary)第4版(1994年)
伝統のある英語学習者用の英英辞典。大学院生時代に買ったが黒1色だし目が疲れて
引きにくい。また字も小さい。3000語の語彙で単語を定義しているが、英語初心者には
難しく、孫引きになりやすい。唯一いいのはカバーがやわらかくて手になじみやすい
点かな? 今と違って当時は英語学習者用英英辞典は、事実上このオックスフォード
しかなかったので選択の余地はなかったのだ。
最新の第7版はロングマンに近い体裁(見出し語増加&大判化&カラー)になってきて
いる。しかしやはり少し文字が小さいし、3000語の語彙の壁は高い。
・「ロングマン現代英英辞典 増補第4版」(2005年) 3,800円
これはなかなかいい! 見出し語や熟語などがカラーで大きい字で書かれているので
目に優しいし探しやすい。10万6,000の見出し語句を2000語の語彙で定義。オックス
フォードよりわかりやすいし、孫引きの可能性も少ない。英語中上級者向きの英英辞典
と言える。この一冊で全てが事足りるだろう。
また、メールやフォーマルな手紙の書き方、履歴書の書き方(アメリカ用、イギリス用)
が掲載されているのも嬉しい。
ただし、カバーが固くて手になじみにくいし、オックスフォード最新版と同じく、
大きいので重い、手に持って引くよりも机に置いてページをめくる方が楽。
また、厚さを抑えるためか、紙が薄く、ページをめくりにくい。
・「ロングマン Active Study 英英辞典 4訂新版」3,255円。CD-ROMつき
上記「ロングマン現代英英辞典」の弟分。いい点を引き継ぎながら見出し語を
45,000語に減らし、辞書自体のサイズも少し小さくしてる。このため、手に持って
単語を引くのが苦にならない。また紙もしっかりしているのでめくりやすい。
収録見出し語が兄貴分の辞書の42%位に減っているが、これで必要十分だ。
つまり、辞書を引く回数の99%を占める単語はこの辞書に載っているので、引く回数
のたった1%を占めているに過ぎない(おそらく一生再び出会うことのない)まれな
単語ために二倍の重さの辞書を毎回使うのはバカバカしい。
英語初心者、中級者はこれで十分!
と言うわけで、私の一番のお勧めは「ロングマン Active Study 英英辞典 4訂新版」!
追記2:小説に関して追記
一般に、専門書や論文に比べて小説を読むのは難しい。感情を表現する副詞や形容詞、
そして名詞も通常日本で暮らしていれば接しない英単語が頻出する上に、構文も凝って
いることが多いからである。
よって、辞書なしでいくら専門書をスラスラ読めるようになっても、簡単な児童書が
読めず、愕然とすることが多い。
以下、洋書小説を読む場合の、私なりのコツを記述する。
・内容が自分の趣向と合った小説を選ぶこと。
有名だからと言う理由だけで文学作品などを読もうとすると、必ず後悔する。
小説を読むのは自分が楽しむため、であることを強く認識せよ!
・マスマーケットと呼ばれる安価な版ではなく、ちゃんとしたペーパーバックを買う。
マスマーケットは版が小さく開きにくいし字も小さい。また、紙やインクが安物
なのでページをめくっていると手が汚れるし、目も疲れる。
ペーパーバック版はマスマーケット版に比べて数百円程度高いだけなので、もし
ペーパーバック版を入手可能なら、迷わずペーパーバック版を購入すべき。
・購入前に手にとって、最初の数ページを必ず読むこと。
英文や単語の難易度を把握するために必ず必要。私の経験では、1ページあたりの
知らない単語数が5個を超えるとストレスを感じ始め、10個を超えると必ず途中で
挫折する。
まだ英語のレベルが低い人は、いきなり一般洋書小説にチャレンジするのではなく、
グレードリーダーから始めると良い。
・なるべく辞書を引かずに読む。
文脈から単語の意味を推測可能で、あまり見たことのない単語は辞書を引かないこと。
小説を読む動機は、「仕事や勉強のため」ではなく「楽しむため」なので、辞書を引く
回数が多いと楽しめず、修行になってしまうからである。
・最初の10-20ページはなるべく辞書を引く。
これは上記項目と反するように思えるかもしれないが、小説の冒頭部分は設定や
登場人物を把握するべき部分なので、多少辞書を引く回数を増やしてちゃんと把握
しておく。それ以降は知らない単語は推測でどんどん読み飛ばし、辞書を引く回数は
1ページあたり1回以下に抑えること。
・少しずつでもいいから毎日読む。
これは日本語の小説でも同じ。途中でしばらく放置すると興味が失せるし。